「彷徨える艦隊」 ジャック・キャンベル (著) ハヤカワ文庫 (刊)

彷徨える艦隊 旗艦ドーントレス (ハヤカワ文庫SF)

彷徨える艦隊 旗艦ドーントレス (ハヤカワ文庫SF)

救命ポッドの冷凍睡眠から目覚めたギアリー大佐は愕然とした。なんと救出されるまでに百年がたっていたのだ。しかも、わが身を犠牲にして味方を脱出させた軍神にまつりあげられている始末。そんな彼に与えられた任務は、敵の本拠星系に攻めこんだものの大敗し、満身創痍となった艦隊を、司令長官として無事に故郷へと連れ戻すことだった! 周囲を埋め尽くす強大な敵艦隊を前に、はたして彼がとった驚くべき奇策とは……!?

巻末の解説は鷹見一幸氏である。内容は推して知るべしというか、そのままじゃん。実は、氏の選球眼というのはかなり信用しているのだが、自身の作品のテイストともダブってるという点で、二重の意味でいい解説だと思う。人称の使い分け、登場人物が知り得ない情報で動かない事を評価するのも、鷹見氏の律儀さの顕れだし、ライトノベル的な大ヒットを狙えない理由かも… 解説をきっちりページの端まで文字数ギリギリに仕上げる貧乏性も彼らしいw

それはさておき、海洋冒険小説系という分類は、確かにそうとしか言えない。逆境からの逆転、寡兵をもって大軍を破るというカタルシスは、基本だ。

しかして、本書では、主人公が悩む局面も、別の価値観で釘を刺すバイプレイヤーへの反論も、全く解決しておらず、次巻が待たれるという点では、商売上手というか、フラストレーションがたまる。